和漢三才図会 巻第三十八 獣類 菟

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ちるくる註:本文中に使用した「菟」は、原本では「ノ」の部分が「刀」の「ウサギ」だが、便宜上「菟」を當てた。

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獣類 菟

『本草綱目』(獣部、獣類、菟)に次のようにいう。「菟は各地にいて、食品のなかでも上味のものである」「大きさは狸ぐらい、毛は褐色である。形は鼠に似ていて尾は短い。耳は大きくて鋭っている。上唇は欠けていて脾臓はない。長い鬚があって前足は短い。尻に九孔がある。趺居(両足の甲を股の上において坐ること)し、足は捷くてよく走る。雄のを舐めて子を孕み、五ヵ月で子を吐き出す」〔「あるいは菟は雄なくても、中秋に望月のなかの菟を顧みて孕むともいうが、これは拠りどころのない説である」〕。「菟の目は瞬かず瞭然としている」〔それで明という〕。菟は明月の精〔白毛は薬に入れるとよい〕で、大雨がつづくととなり、となると菟になる。ケイ惑星(火星。ワザワイボシ)がくっきりとしていなければ、雉が菟を産む、と。

シャク〔音は〕 菟に似ているが大きい。青色で、首は菟と同じで、足は鹿と同じである。

菟肉〔甘、寒〕 中(脾、胃)を補い気を益す。渇を止め、小児の豌豆瘡を除去する〔菟を食べるときは尻を取り去らねばならない。八月から十月までが菟の食べ頃である。薑芥(ねずみ草)、橘および鶏肉は菟と同食するを忌む〕。

菟血〔カン 寒〕 血を涼しくし血を活かす。生を催進し産を易くし胎毒を解する。痘瘡を患わなくなる。

菟脳髄 これも生を催進させる神薬である〔以上の薬の処方は『本草綱目』の付方に見えている〕。生のまま凍瘡に塗ればよく治る。

菟の皮毛〔臘月(十二月)に収取する〕 難産および胞衣の出ないもの、余血が心をみだすもの、脹刺して死にそうになっているもの、などに極めて効験がある〔灰に焼いて、方寸の匕(茶さじ一杯)ぐらいの量を酒とともに飲む〕。菟毛のくなった筆〔焼いて灰にする〕は小便の通じないもの、および難産を治す。

 〔拾玉〕何となく通ふ菟もあはれなり片岡山の庵の垣根に 慈鎮

△思うに、菟は飛ぶように善く走って、山に登るときはますます速くなる。山を下るときは稍遅くなるが、それは前足が短いせいである。いつも熟睡していても眼を閉じないで、黒が瞭然としている。

『伝燈録』に、菟は川を渡るときは浮く。馬が渡るときは身体の半ばが水につかる。象は底まで身体がついていて流れをって行く、とある。

『宋』(『宋書』符瑞志)によれば、「王者が徳盛んであれば赤菟があらわれる」「王者が耆老を敬えば白菟があらわれる」とある。けれども今、白菟は普通にいて、北国の菟には白いものが多い。越後菟と称するものは形が小さくて潔白で可愛い。つねに、穀を食べ、よく馴れる。普通の菟は性が狡くて人に馴れにくい。

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