兎に関わる妖怪・怪異

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 様々な文化における兎の怪を見ていきます。

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日本の怪異

兎妖怪の謎

ある日、ふと兎系の妖怪と云うのを聞いたことがない事に気付きました。例えば、タヌキやキツネはその存在そのものが一種の怪であるし、イヌなら犬神、ネコなら猫又、ネズミなら鉄鼠、ウシと云えば件、と身近な動物ならある程度某かのキャラクタを思い浮かべる事が出来ますが、ウサギと云って思い出す「妖怪」はいません。

単に私が知らないだけかと思い、取り敢えず手持ちの妖怪画の本を当たってみましたが、暁斎の「百鬼夜行図屏風」にそれらしきモノが一匹描かれているのみ。無論その手の本を沢山持っている訳ではありませんが、どうもメジャーな妖怪はいそうにない。

なお、隠れ里の村上健司氏著の「妖怪十二支参り」と云う本を見つけて、「ついに兎妖怪の全貌が明らかになる……!!」と鼻息荒く購入したら、

まずは兎の妖怪から……と思ったのだが、兎の妖怪はなかなか見つからない。

(中略)

兎の怪異や、兎のような妖怪であればちらほらとあるが、"これぞ兎妖怪!!"というものがいないのである。

出典:ホラージャパネスク叢書 妖怪十二支参り……村上健司 発行/同朋舎 発売/角川書店

との事。

仕方がないので上記の本でも参考にしていた千葉幹夫氏編集の「全国妖怪事典」を引いてみると、兎の怪として以下の事例が紹介されていました。

  • 静岡県、新左衛門村(河津町)で、山中で鋏箱を担っていくときのような音がした。窺い見ると、兎が数十匹円座して腹鼓を打っていたと云う。出典は津村淙庵『譚海』巻八
  • 徳島県三好郡昼間村には兎に化ける狸が出ると云う。出典は笠井新也「阿波の狸の話」

消える兎の話~甲子夜話

松浦静山「甲子夜話」巻之十六に、「兎月夜に消する事」と云うのがあります(左のリンクは、私がその話を電子テキストにおこしたものなので、全文を参照されたい方はジャンプして下さい)。

「兎を月下に置くと水に変じる、と云う話があり、信じられない話だが、若い頃に沢山の野兎を捕まえた際に籠に入れて月下に一晩置いていたら、翌朝籠の中の兎は皆居なくなっていた」と云うエピソードが語られています。

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海外の怪異

精霊など

場所を大きく変えて、モンゴルのカルムイク族の伝説の中に サキムニ と云う兎の話があります。

サキムニと云う兎は、飢えた男の為に自ら食物となって与え、それを見て感動した大地の精霊によって魂を月に送られたと云う……、そう「三つの獣菩薩の道を行じ、菟身を焼ける語」と同じ話。

これはインド経由の仏教でのお話なので、モンゴルにも伝わっていると云う事でしょう。ただ、「サキムニ」と云うのがその兎の名前なのだとしたら、もう少し突っ込んで調べてみる価値がありそうです。前述のリンク先を参照されると解りますが、このお話に登場する動物には名前はつけられていないので。

都市伝説

兎が登場する海外の有名な都市伝説としては、以下の様なものがあります。全然怪異ではない訳ですが。

隣家の兎

犬を飼っている家族がいて、隣人は兎を飼っている。ある時家族は犬が隣人の兎の死体を銜えているのを発見し、慌ててその兎を隣人の家の兎小屋に戻す(或いは、よく似た新しい兎を買って、小屋に入れる)。翌日、隣人が不思議そうな顔をして云う。「一昨日死んだ兎を庭に埋めていたのに、何故か今朝それがまた小屋の中にいる」と。

白水社の「悪魔のほくろ」(ロルフ・ヴィルヘルム・ブレードニヒ編、池田香代子、真田健司訳)に詳しい話が掲載されています。

ビバリーヒルズ青春白書(おそらく第9か第10シーズン)でもこのネタが用いられていました。この時は生きた兎を戻しておいたと思います。

兎の復讐

男たちが兎を捕まえて、その兎に爆発力の強いゼリグナイトを括り付けて、導火線に火をつけて放す。おびえた兎は男達の乗っていた車の下に隠れてしまい、兎と共に2万ドルの車が木っ端微塵になってしまった。

この話にもいくつかパターンがあるようで、兎ではなく犬だったり、燃えるのは家や小屋だったりもするようです。ネタ元は「メキシコから来たペット」(ジャン・ハロルド・ブルンヴァン、行方均・松本昇(訳)、新宿書房)

医学業界の都市伝説などを紹介している、医学都市伝説にも、このパターンの話が紹介されていました。KAMIKAZE Rabbitと名づけられたりもしているようです。

幽霊・怪異譚

英国、リンカーンシャー州にあるボリングブルック城に監禁されていた魔女の魂が、ノウサギの姿を借りて現れるとの噂がありました。「ハーリー写本」と云う本に大本の話が収録されているとの事。

この街の多くの住民が己の知識にもとづいて証言している話だ。この城が野ウサギに似た形の霊に取り憑かれているというのだ。この霊はいつも監査人の集会に現れて人々の足の間を駆け抜け、ときには何人かをひくり返して、去っていく。みなが城の庭まで追いかけていくと、天上の低い地下室へと続く鉄格子のところにいた。明かりを手にしてそちらへと続き、くまなく探したがついぞ見つからなかった

出典:世界怪異現象百科……ジョン&アン・スペンサー 桐生操/監 HDC/訳 原書房

兎と魔女との関係については、稿を改めて考察します。

現在のところ、「おどろおどろしさ」とは無縁の怪異たちです。ボリングブルック城の噂に関しては、当人たちは恐ろしいものとして考えているようですが、兎に化けるよりは猫に化ける方がより恐怖を煽れるのでは……なんて要らぬお節介? (※魔女はよく野兎に化けるのです)

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参考文献

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