兎と民話

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兎が登場する、世界各地の民話を紹介します。大まかなイメージごとに分類してみました。

目次
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臆病ウサギと悪者キツネ

ウサギの唇はなぜ裂けているのか

ある時、狐は兎を馬鹿にして云う。

「君はかわいそうな奴だ。君にはノミだって脅かす事は出来ないだろう」

兎が悲しい気持ちになって農場を横切り、羊の群れの中へ跳び込んだ。すると羊は驚いて四方に逃げてしまった。兎は喜んであまりにも大笑いした為に、その時唇が裂けてしまった。

参考:スウェーデンの民話 「なぜ野ウサギの唇は裂けているのか」

うさぎの涙

昔、狐は氷で作った家に、兎は木の皮で作った家に住んでいた。春になると氷の家は溶けてしまい、狐は兎の家に行って「一晩泊めてくれ」と頼んだ。親切な兎は狐を泊めてやるが、狐は途端に兎を追い出してしまった。

兎が泣きながら走っていると、犬がやって来て「どうしたの?」と尋ねた。兎が犬に事情を話すと、犬は怒って狐の所へ向かう。しかし逆に狐に脅かされて逃げてしまうのだった。

再び兎が泣きながら走っていると、今度は熊が「どうしたの?」と尋ねるので事情を話すと、熊も怒って狐のところへ向かった。しかし熊も狐に脅かされて、逃げてしまうのだった。

その後雄牛も同じような目に遭って逃げてしまう。兎は途方に暮れて、大声で泣きながら走っていると、鎌を持って歩いている雄鶏に出くわした。

「兎さん、そんなに泣いてどうしたの?」

兎は狐にされた事を話し、犬でも熊でも牛でも駄目だったと云うと、雄鶏は、

「僕に任せろ。必ず追い出してあげる」

と云う。二匹で兎の家まで行くと、雄鶏は鎌を振り回しながら騒ぎ始めた。

「コケコッコー、この鎌でお前の首をチョン切ってやるぞ! 早く出てこないと酷い目にあわせるぞ!」

狐は、雄鶏のあまりの勢いに驚いて逃げていってしまった。こうして、兎は雄鶏のお陰でまた自分の家で暮らせるようになった。

参考:ロシア民話選 「きつねとうさぎとおんどり」

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兎って、おバカさん

夏が来れば

野兎は冬の寒さに凍えながら云う。

「夏になったら、絶対に暖かい家を建てるんだ」

夏が来ると、兎は幸せそうに跳び跳ねながら云う。

「僕には木の茂みがあれば充分なんだ!」

参考:スウェーデンの民話 「もしも夏だったら・・・」

兎の自殺

ある日兎達が集まって云った。

「この世に、我々ほど臆病な動物はいない。我々は虫が木の枝を動かしただけで驚くような生き物だ。こんな臆病な生き物は生きていても仕方ない。みんなで死のう」

みんながそれに賛成し、順番に川に飛び込んで死のう、と云う事になった。

兎たちが川岸に着くと、その音を聞きつけた蛙たちが驚いて次々に川に飛び込んだ。兎たちはその姿を見ると、

「何だ、この世には我々よりもっと臆病な奴がいるんじゃないか。何で我々が自殺しなければならないんだ」

そう云って、兎たちは意気揚々と巣へ帰っていったのであった。

参考:シルクロードの民話5 「うさぎの自殺」

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兎は、知恵者

兎の生き胆

兎の大将が、浜辺で跳びはねて遊んでいた。そこへ神の子が沖からやって来て、

「兎さん、海を支配している亀の大王が兎の大将を是非招いて酒宴をやろうと申しております。さあ、私の背中に乗って下さい、案内いたしますよ」

と云うので、兎は

「本当かい? 嘘じゃないだろうね」

と尋ねると、鯱神の子は本当だと答える。そこで兎は鯱神の子の背中に乗って沖を目指した。陸から遥か遠い沖合いまで来ると、鯱神の子は笑いながら云った。

「わはは、馬鹿な兎だ。本当はな、亀の大王様の一人娘がご病気に罹って、それには兎の生き胆が一番だと云うんでお前を連れてきたんだ。正直に云ったらお前が嫌がるのは解っていたから、騙してやったんだ」

それを聞いて兎は答えた。

「何だ、最初から正直に話してくれれば良いものを。そうしてくれたら、俺も家からちゃんとした生き胆を持って来たって云うのに。もう一度陸へ戻ってくれたら取って来てやるぞ。何せ今持ってるのはガラクタみたいな胆と骨ばかりだ。これっぽっちも役には立たないよ」

鯱神の子が「本当かね」と尋ねると、兎は胸を張って「本当だとも」と云う。

そこで鯱神の子は兎を連れて浜へ引き返した。砂浜へ着くと、兎は鯱神の子の背中からヒラリと飛び降りると大笑いして云った。

「わはは、馬鹿な鯱だ。胆が二つもあってたまるかい。本当の話なんかするもんか。今度は僕が騙してやったんだ」

これを聞いた鯱神の子は悔しがりながら沖へと戻っていった。

参考:日本伝説大系 「兎の生胆」(アイヌの民話)

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かわいいふりしてあの子……

結婚した野兎

兎が野原で嬉しそうな顔をして跳ねているのところに狐がやってきた。

「狐さん、聞いてよ、僕とっても幸せなんだ。結婚したんだよ」

「それは良かった」

狐は答えた。

「いやいや、それが大変だったんだ。僕の奥さんは悪魔のような怖い兎だったんだよ」

「ほう、それは気の毒に」

「うん、でもそんなに酷くもないんだよ。彼女は持参金として自分の家をくれたんだ」

「ああ、いいものを手に入れたね」

「いや~、それがさ、火事になってしまって、その家も何もかも焼けてしまったんだよ」

「全く気の毒な事だね」

狐がそう答えると、兎はニッコリ笑ってこう云った。

「却って良かったのさ。お陰で彼女も燃えちまったんだから」

参考:ノルウェーの民話 「結婚した野ウサギ」

野兎とワニ

野兎の姉さんは、ワニと結婚していた。ある日、野兎は姉夫婦の所へ遊びに行った。

そこで野兎は、ワニが姉さん兎の産んだ卵を倉庫にしまうのを見た。卵は野兎の大好物だった。

野兎は、ワニ夫婦が働きに出ている間に倉庫にこっそり忍び込み、卵をみんな平らげてしまった。次の日もその次の日も、野兎はこっそり卵を食べに行ったのだった。更に次の日、野兎は卵を一つだけ残しておいた。その晩、野兎はワニに「明日帰ります」と告げた。

翌日、野兎が帰ろうとするとワニが野兎に云った。

「その前に、倉庫の卵を数えてくるから待っててくれないか」

野兎はワニに尋ねた。

「卵? いくつあるんですか」

「七十五個だよ」

ワニが答えると、野兎はそれを見せて欲しいと云った。そこでワニは、ついでに数を確認してきてくれと頼んだ。

野兎は倉庫から大声で云った。

「うわあ、これは大きな卵だ、良い卵だ」

そうして、只一つ残った卵をワニに向かって掲げて見せた。それから卵を持った手を下ろすと、再び持ち上げて云った。

「これも大きい卵だな、これで二つ」

野兎は卵を持った手を上げたり下げたりしながら、七十五まで数えた。

それから野兎は姉さんにさようならを云って、ワニに家まで送ってもらう事にした。

姉さん兎は野兎を見送ってから、倉庫を覗いてみた。すると、そこには卵が一つだけしかなかった。

姉さん兎は慌ててワニに向かって叫んだ。

「おまえさん、おまえさん! 野兎が卵をみんな食べてしまったんだよ! そんな奴、水の中に放り投げてちょうだい!」

ところが、風が強く吹いていたので、ワニには姉さん兎が何と云っているかよく聞こえなかった。

「ん? 嫁さんが何かを云っているようだが」

背中に乗った野兎が云った。

「なあに、風が強いから気をつけて、と云ったんだよ」

「そうかそうか、しっかり掴まっていろよ」

こうしてワニは野兎を家まで送り届けて帰っていったのだった。

次の日、ワニ達は野兎を捕まえに家までやって来たが、野兎はとうに新しい家に引っ越してしまっていた。

参考:のうさぎとさいちょう 「のうさぎとワニ」

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参考文献

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